3年生の冬
公立受験が近くなった教室は、けれど私立入試を終え、受験生を卒業した生徒たちで賑わっていた

「やってらんないよね」

数学の問題が解けず、頭をうんうん唸らしていた私の隣に、親友の美香子が英語の宿題を置いた

「なにが」

問題から目を離さずに、そうか、わかった、とノートに答えを書き込んでいく

しばらく返事が帰って来なかったので、ひとまずペンを置いて、美香子の方へ目を向けた

自分から声をかけてきたくせに、黙々と問題を解いている美香子

光の加減で茶色っぽく見える美香子の髪はさらさらで、くせ毛の私はうらやましさからか、美香子を見るときはついつい髪に目がいく

「んー、だってさ」やっぱり問題からは目を離さずに、美香子は気だるげに口を開いた

「私立終わったからって、浮かれてるやつ多過ぎない?みんながみんな受験終わったわけじゃないのにさ」

たしかに、とは思う

受験が終わってプレッシャーから開放された生徒達は、休み時間だけでなく、授業中や授業中に設けられた自習時間にまで私語を慎もうとしない