星谷は芽衣を追いかけようとしたけれど、誰かに背中を引っ張られてしまった。
 振り向くと上着の袖を引っ張る志保の穏やかな顔が目に飛び込んだ。

「どこへ行くの?」

「決まってるだろう!? 芽衣を追うんだよ!」

「泣き出したんでしょう? 行かないで、ソッとしておいたら方がイイんじゃない?」

(お前なー)

 芽衣がショックを受けて泣いたのは誰のせいだと思っているんだと文句言ってやろうと星谷は思ったけれど、カッカしても仕方がないと思った。
 どうせ聞く耳持たない気まぐれ女なのだから。

「冗談はやめろよなー。俺と付き合っているなんて、有りもしねー事を言うんじゃねーよ」とこれだけは言っておくのだ。