それぞれの過去~叶夢編~





『無理だよ・・・・・。どうせ、私達になんか。』




『無理じゃない!私達は、どんなことがあったって立ち向かえる!それに・・・・・杏は絶対私が守るから!!』





「カーーット!!」





「良い演技だったよ〜。真凜ちゃん!」




「ホントですか!?ありがとうございます!」





私、椎名真凜!14歳。




今は、数ヶ月後に放送される学園ドラマ『同じ風を感じるまで』の撮影の真っ最中。




「真凜!」




振り返ると、お母さんが立っていた。





「あっ!お母さん!演技良かったって褒められたよ!」





私は、お母さんの元に走っていく。





すると、お母さんは不機嫌そうな顔で言った。





「何言ってるの?所詮、褒められたって準主役じゃない。いつまでもヘラヘラしてると皆に置いてかれるわよ?」




「・・・・・・はい。」





「大体、監督も監督よ。せっかく4年間休んで明星に受かったのに、与えられたのが準主役だなんて!」




「あ、あの・・・・・・お母さん。」





「それに、あんな無名女優のせいで真凜に役がまわって来なかったじゃない。」





そう。私は小さい頃から天才子役として何本ものドラマや映画に出演してきた。





でも、有名な進学校・明星学園の中学受験をするために活動を4年間、休止していたのだ。




確かに、私は準主役だけど友達のことを悪く言うなんて・・・・・。




「あんななんて言わないで!梨香は、私の友達・・・」





「そうだぞ真凜。もっと有名になって稼いで貰わないとな〜。」




「お、お父さん・・・・・・。」





「何よあなた!また金をせびりに来たの!?」





「うっせーな!俺の勝手だから良いだろ!!」





「ふ、2人ともやめて!」





私が止めに入っても2人は辞めず、口論が続いた。





(せっかくのドラマの撮影なのに・・・・・・。)






「うわぁ〜。またやってるよ。あの2人。」




「昔は、どっちもスゲー俳優だったのによ〜。」




「父親は、どんな役でもこなすカメレオン俳優・牧野 裕二。母親は、歌手から女優になった天才少女・椎名 朋花。」




「それが、結婚したら父親はパチンコにギャンブル三昧。母親は、毎日毎日、愚痴ばっかだし・・・・・。」





「ハァ・・・。真凜ちゃんも大変だよな〜。」





監督さんや他の共演者の人達が、ヒソヒソと話している。



(なんで、こんなことになっちゃったんだろう。)