ユ「藍乃、ローナ、ありがとう。藍乃もローナも大好きだ」
そう言いながら、彼は私をそっと抱き寄せた。
「……私も、彼方もユアンも大好き!次までに料理も包装も練習するよ」
手を回して、離れないように力強く抱き返す。
ユ「俺、教えようか?」
「彼方に教えてもらったら意味ないよ!」
ユ「ユアンなら?」
いたずらっ子のように笑うその顔は、まだ生まれて10年も経っていないあどけない男の子だけど、中はもう大人だ。
「ユアンでもだよ!」
残念、と本当に寂しそうに言いながら、彼は私を離した。
ユ「ねぇ、チェスしないで暫くこのままでいたいな。だめ?」
「ううん、ダメじゃない。私もこのままがいい」
指を絡め、並んで座る。
私たちは、子供だけど子供じゃない。
こんな小さな姿で、今は兄弟だけど。
いつかお互いが結婚するその日まで、私たちは一緒にいよう。
変身して藍乃の姿になって、本当はキスのひとつでもしたいけど、魔力の動きでお母様や使用人が部屋に来ると台無しだから。
今はしないよ。
ユ「また、今度デートに行こっか」
「キスはその時までお預けだね」
たとえ一生常に行動を共にすることが叶わなくてもいい。
私たちはこれで幸せなのだから。
Happy Valentine……



