ユ「ねぇ、そんなことはいいからとりあえず早く中に入れて?早くチェスしよ?あっ、それとも他のゲームする??」


ユアンの口角は上がりっぱなしだ。


もしかして、バレンタインだということに気づいたのだろうか。


「……どうしたの?」


先程とは全く異なるその表情は、私に恐怖さえも覚えさせた。


ユ「別にぃー?なーんでーもなーい」

「お前、クスリや酒じゃないだろうな?」


最早定位置になっている椅子に、先ほど同様後ろを向いて座るユアン。

私以外の人間が来た時に慌てて座り直すのは、もう見慣れた光景だ。



ユ「ばっ……誤解だよ!それはないって!!断じて!!」


「そっか、ならいいけど」

私もユアンの近くにある椅子に腰掛けた。


ユ「今、少し藍乃がこんにちはしてたよ」


今度はイシシといたずらっ子のように笑う。

ユアンは年相応なのではないだろうか。


「……ところで、ユアン、さっきは本当に……」


改めて謝ろうとすると、ユアンがずっと前に手を前に伸ばした。


ユ「ローナ、ストップ。謝ろうとしたでしょ。謝らなくていいよ」