「ふぅ、これで出来たかな」


思わず独り言をこぼしてしまった。


不格好なシワの入った包装紙に包まれた箱が2つ、私の目の前に並んでいる。

お世辞にも綺麗とは言えないだろう。


時計を見ると、ユアンが出ていってから25分ほどだった。


「ユアンはバレンタインって気づいてなさそうだったし、突然手作りチョコなんて渡したら変に思われるかな……?」


ユアンが来るまでの5分、どうすればいいのかわからなくなってしまった私は部屋を行ったり来たりと往復する。


──コンコン


「っ……来た……!」

柄にもなく狼狽えてしまう。

心臓が跳ね上がる音が聞こえた気がした。


お兄様たちは学園にいるし、お父様は公務、お母様は部屋で今日は編み物をしているので、今日は確実にユアンしか来訪者はいない。

第一、前世のバレンタインなんて文化はこの世界には存在していない。


良かった、来てくれた。



「あ、あのっ……ごめんね。さ、さっき……その……」



なんて言ったらいいのか理由が上手くまとまらず、まごついていると、「むふふー」というユアンの笑い声が聞こえた。