☆☆☆

「お待たせ。はい、どうぞ」

手渡したのはホットココア。

「ありがとう」

一口飲むだけで、甘さとあたたかさが身体中を駆け巡る。

でも少しだけ苦く感じるのは、オレの気持ちのせい?


「暮沢さ…」

トンッとオレの肩に頭をあずける暮沢さん。

突然の出来事に驚きを隠せない。

ど、どうすれば……
彼女は何も言わないし、このままオレも黙っていた方がいい?


「水野」

普段とは違う可愛らしくて甘い声。

彼女は悪戯っぽく笑って「ドキドキした?」と聞いてきた。

「急すぎて…」

「美咲さんに教えてもらったことを実践してみたんだ。成功、かな?」

「そういうのって……す、好きな人にするものじゃないの?」

「……そうだね」

それはどっちの意味ですか?

オレはこんなにもドキドキしてるのに、君は気づいてくれないの?

「あ、あのさ」

「なに?」

「……なんでもない」


口元に残る「君が好き」

……オレが伝えられるはずもなく、

ぬるくなったココアとともに飲み干した。