「暴走族なんでしょ?」
「あ?それが何だ」
「……お願いがあるんだよね」
そう呟いた次の瞬間、泉は距離のあった間を詰めて俺の前に立ち、ばっと勢いよく頭を下げてきた。
「お願いしますっ、私をそこのメンバーにして下さい!!」
「……はぁ?」
「時間がないの!!楽しい事やりたいの!!やってみたかった事やりたいの!!お願い古賀君、いれて!!」
「……てめぇ、相当なアホだな」
暴走族に、それも俺ら“鬼羅”に入りたいなんて、頭がイカレちまってるとしか思えない。
が、後から泉の言った「時間がない」という単語が引っかかったので、それを引っ張ってみる事にした。
「おい。お前、『時間がない』って何だ」
「寿命」
「は?」
「今日、多分20歳まで生きられないって病院の先生に言われた」
淡々と。
本当に淡々と、泉はその事実を告げた。自分がもうすぐ死ぬ現実を。理不尽な病に倒れると予告された真実を。
「だから、後悔とかしたくないの。遊んで遊んで遊び倒したい。やりたい事は悔いの残らないようにやっときたいの」
「……それが俺らってか?」
「楽しそうだったのよ暴走族!私のお父さんの弟も暴走族やってたから、昔の話聞いてはきゃーきゃー言ってたの!私が!」
なるほどこの騒がしさと肝の座りっぷりは遺伝子か。血は争えねぇ。しかも叔父の血。
そうこう俺が勝手に思っている間に、泉はまた深々と俺に向かって頭を下げてくる。
「お願いします、楽しそうだからいれて!!」
「……理由がクソだな」
「おーねーがーい!毎日朝ごはん作ったげるよ!!」
「殺すぞ」
こいつ絶対俺を馬鹿にしてやがる。
だがやはりこいつも負けず劣らず、引き下がる気配が一切ない。
「……いい加減にしろ。女に出来るようなモンじゃねぇ」
「やってみないとわからないじゃん!?」
「バイク運転出来んのか、お前」
「無理!!」
「ほれ見ろ」
「でも、怪我の手当てとかは出来るから!!」
何を言っても食い下がってくる泉に、思わずため息が溢れ出る。
「あのなぁ、そういうのは…」
「後悔したくないの!!」
更に口からこぼれた俺の文句を、泉が大きな声で遮った。
「ちょっとしか生きられないんだとしても、そのちょっとを全力で楽しみたいの!!せっかく生まれてきたんだから、あと少しの時間ぐらい、全部、全力で楽しみたいの!!生まれてこなきゃ良かったなんて、死んでまで思いたくないの!!」
「——、」
『あんたなんか、生まれてこなきゃ良かったのに……!』
ずっと耳から離れない、何度も言われたその言葉が、頭の中に浮かび上がる。
思っていた。ずっとそう思っていた。
生まれてこなきゃ良かったとずっと思ってて、生まれて良かったと思えた事は一度もなかった。
一度も、なかったんだ。
「……チッ」
「あっ、舌打ち!」
「うるせぇ」
今度こそ歩を進める。嫌な事を思い出した、と吐き気まで感じる始末だ。
「ちょっと待ってよ!古賀君!」
なのに、泉は未だ食い下がり、俺の後ろを追ってくる。来るんじゃねぇと唸るように言っても、ついてってやる!とどこか自慢げな声で返された。
ムカついたので後ろを向いて文句を言おうとしたが、その時横目に見えた夕日がうざくて、また前を向いて歩を進めた。
「ちょっと!待って!待てって言ってんだろこのブラックリーゼント!」
「誰がリーゼントだゴラ!!」
俺の髪はオールバックだ!!!
「あ?それが何だ」
「……お願いがあるんだよね」
そう呟いた次の瞬間、泉は距離のあった間を詰めて俺の前に立ち、ばっと勢いよく頭を下げてきた。
「お願いしますっ、私をそこのメンバーにして下さい!!」
「……はぁ?」
「時間がないの!!楽しい事やりたいの!!やってみたかった事やりたいの!!お願い古賀君、いれて!!」
「……てめぇ、相当なアホだな」
暴走族に、それも俺ら“鬼羅”に入りたいなんて、頭がイカレちまってるとしか思えない。
が、後から泉の言った「時間がない」という単語が引っかかったので、それを引っ張ってみる事にした。
「おい。お前、『時間がない』って何だ」
「寿命」
「は?」
「今日、多分20歳まで生きられないって病院の先生に言われた」
淡々と。
本当に淡々と、泉はその事実を告げた。自分がもうすぐ死ぬ現実を。理不尽な病に倒れると予告された真実を。
「だから、後悔とかしたくないの。遊んで遊んで遊び倒したい。やりたい事は悔いの残らないようにやっときたいの」
「……それが俺らってか?」
「楽しそうだったのよ暴走族!私のお父さんの弟も暴走族やってたから、昔の話聞いてはきゃーきゃー言ってたの!私が!」
なるほどこの騒がしさと肝の座りっぷりは遺伝子か。血は争えねぇ。しかも叔父の血。
そうこう俺が勝手に思っている間に、泉はまた深々と俺に向かって頭を下げてくる。
「お願いします、楽しそうだからいれて!!」
「……理由がクソだな」
「おーねーがーい!毎日朝ごはん作ったげるよ!!」
「殺すぞ」
こいつ絶対俺を馬鹿にしてやがる。
だがやはりこいつも負けず劣らず、引き下がる気配が一切ない。
「……いい加減にしろ。女に出来るようなモンじゃねぇ」
「やってみないとわからないじゃん!?」
「バイク運転出来んのか、お前」
「無理!!」
「ほれ見ろ」
「でも、怪我の手当てとかは出来るから!!」
何を言っても食い下がってくる泉に、思わずため息が溢れ出る。
「あのなぁ、そういうのは…」
「後悔したくないの!!」
更に口からこぼれた俺の文句を、泉が大きな声で遮った。
「ちょっとしか生きられないんだとしても、そのちょっとを全力で楽しみたいの!!せっかく生まれてきたんだから、あと少しの時間ぐらい、全部、全力で楽しみたいの!!生まれてこなきゃ良かったなんて、死んでまで思いたくないの!!」
「——、」
『あんたなんか、生まれてこなきゃ良かったのに……!』
ずっと耳から離れない、何度も言われたその言葉が、頭の中に浮かび上がる。
思っていた。ずっとそう思っていた。
生まれてこなきゃ良かったとずっと思ってて、生まれて良かったと思えた事は一度もなかった。
一度も、なかったんだ。
「……チッ」
「あっ、舌打ち!」
「うるせぇ」
今度こそ歩を進める。嫌な事を思い出した、と吐き気まで感じる始末だ。
「ちょっと待ってよ!古賀君!」
なのに、泉は未だ食い下がり、俺の後ろを追ってくる。来るんじゃねぇと唸るように言っても、ついてってやる!とどこか自慢げな声で返された。
ムカついたので後ろを向いて文句を言おうとしたが、その時横目に見えた夕日がうざくて、また前を向いて歩を進めた。
「ちょっと!待って!待てって言ってんだろこのブラックリーゼント!」
「誰がリーゼントだゴラ!!」
俺の髪はオールバックだ!!!
