――だけれど、今日は何かが違ったらしい。


「(誰か……居る?)」




"ゴミのポイ捨て禁止"


そんな言葉を乗せて佇む、古いボードの脇を通り抜けていく。





葉の上で水滴がキラリと輝いて、直ぐに地面に落ちていく。

そんな、この時期独特の光景をゆっくり味わう暇もなく、何時《いつ》もとは違う景色をつくり出している"根源"に近付いていく。




公園の隅に設置されている、陳腐なベンチにその"男"は居た。



「……、」



6メートル、5メートル。

次第にはっきりと目視出来るところまで来ると、私はその場に立ち竦んだ。






黒っぽいリクルートスーツに包まれた身体は、驚くほど公園のベンチにはそぐわなくて。


ワックスで固められた頭髪はと言うと、男が寝ている所為で四方八方に癖がついてしまっているらしかった。



「(就活中…の、大学生…?)」




彼が胸元に抱える鞄は、なんだか社会人というより学生のものという気がしたから。