「そっかー」

「……なんでちょっと嬉しそうなの?」

「だってさ」



ねえ、お兄さんあのさ。

私たちって、なんで出逢ったばかりなのにこんなに話をしてるのかな?




逢ったのは偶然で、たまたま此処が近所の公園だったからで。




「だって――…それなら、お姉さんを"タバコ"に取られないでしょ?」



それなのに、なのにどうして。

甘い言葉ばかりを、私に囁いたりするの。











二週目に出逢った彼は、先週と違わず黒っぽいスーツに身を包んでいて。

ワックスで整えられた髪は、優しい香りを風に乗せていて。




偶然見つけた猫を愛しげな表情で見つめてから、そのままの瞳で私のことを映し出す。





ここまでなら良かった。

今後は逢わなくて済むなら、それに越したことは無かったのに。







結局彼は、男慣れしていない私の反応を面白おかしく観察していたに過ぎないのだ。