その涙を拭えても

彼が部屋に入ってくる。放心し、涙を流す私を彼は優しく抱きしめてくれた。

「ねえ、さっきの人、知り合い?」

落ち着いてくると彼が聞いてくる。

「ううん。部屋を間違えたみたい」

きっと彼とはもう会わないだろう。彼もそのつもりでここに来たのだろうから。さようなら、好きだった人。私は幸せになります。

彼がそっと抱きしめてくる。私はそっと、その温もりに身を任せた