「伊澄、最近適当になってきてない?」

 女子高生に頼る情けない自分を棚に上げて、僕は不満を露わにする。三週間前はあんなに丁寧にアドバイスをくれていたのに……。



〈だって、よく考えてみて。もし今より二人の仲が進展して、どこかに出かけることになったとするでしょ。デートのたびにどこ行けばいいとか、どんな服着て行けばいいかなんていちいち助言してらんないから。いつまでも私に頼ってばっかでどうすんの!〉



 一気にまくし立てられる。それは紛れもなく正論だった。いつまでも伊澄に助けを求めるのはよくない。もし、仲が進展すればの話ではあるが……。

「おっしゃる通りです」

 それでも不安なものは不安で、心細さが声ににじんだ。



〈それに、私が背中を押さなくても、キミならきっと大丈夫だから。頑張って〉

 先ほどとは打って変わって、彼女は優しい声で言った。

「ありがとう。なんか、伊澄には励ましてもらってばっかりだね」

 さっきまで伊澄に頼り切っていたことを反省して、僕はお礼を言った。



 ただの栄養補給だった昼休みの時間は、ずいぶんと楽しいものになった。

 明李さんと仲良くなれたのも、伊澄のおかげだ。

 彼女には、色々と助けられてばっかりだ。そんな彼女に、何か僕がしてあげられることはないだろうか。