〈うーん、いくつか理由が考えられるけど……〉

「例えば、どんなの?」



〈仮説その一。キミの好意に気づいていて、遠回しに拒絶している〉

「うっ……」

 いきなり殺傷性の高いものがきた。もしそうだとしたら、ショック死するかもしれない。



〈でも、来週も一緒にお昼食べようってことになったんでしょ? なら違うと思うよ〉

「よかった」

 ホッとする。



〈仮説その二。失恋したばかりで、気持ちを切り替える時間が必要〉

「誰だ! 明李さんをフった男は! 貴様の目は節穴か⁉ 脳天にも穴を空けてやろうか?」

 思わずその場で立ち上がってしまった。



〈まだ仮説だから! 落ち着きなさい! あとキャラ崩れすぎ!〉

「……ごめん」



〈仮説その三。そもそも恋愛に、または男に興味がない〉

「ああ……うん。これはありそう」



〈でもそれならそう言えばいいのに。やっぱり本人が言いたくないってことはその二じゃない?〉

 たしかに、今は恋愛する気がない、というのは、失恋したばかりの女性が言いそうな台詞ではある。



 しかし……。

「あり得ないよ。あんな素敵な人をフるなんて考えられない」

 惚れた弱みかもしれないけれど、彼女のことを嫌いになる要素なんて一つも見当たらない。



〈それはキミの主観でしょ。もしかすると、プライベートではだらしない人かもしれないよ。部屋とかぐちゃぐちゃだったりして……〉

「僕ならそんなの、全然許せる。むしろ欠点の一つや二つくらいあってくれないと困る!」



〈はいはい。でも、嫌われてはいないってことはわかったからよかったんじゃない? まずは一歩前進〉

「まあね。だけど、僕を恋愛対象として見ていないこともわかった」

 僕は力なく笑う。いつも以上に悲観的になっている。