「いただきまーす」

 明李さんが両手を合わせて言った。とんかつを一切れ口に運ぶと、顔をほころばせる。とても美味しそうに食べている彼女の姿を見て、空腹感が上昇した。

 僕も同じように、いただきますを言ってから食べ始める。



 うん。美味しい。しかも、量もそれなりにある上に値段は高くない。コストパフォーマンスに優れている。

 二人で黙々と箸を動かす。



「朽名さんは、いつも学食なんですか?」

 このままだと会話をせずに終わってしまいそうで、僕は思い切って問いかけた。

「んー、大体は友達と学食かな。でも、金曜はその友達が授業入れてないから、毎回一人なの」



「そうなんですか……」

 その友達というのは男性だろうか。だとすると、どういった関係なのか。まだそうと決まったわけでもないのに、どうしても嫌な方向へ考えてしまう。



「あ、時光くん。よかったら金曜日は一緒にお昼食べない?」

 僕の心配などよそに、明李さんはとてつもなく素敵な提案をしてきた。



「え?」

 毎週明李さんとお昼をご一緒できるということだろうか。ここまでくると、夢かもしれないと思い始める。こっそり頬をつねってみたけれど、目の前にいるのは間違いなく僕の好きな人で。



「もちろん嫌だったら断ってくれていいから」

「そんな、嫌だなんて! ぜひお願いします」

 強烈な追い風が吹いているようだ。とにかく、このチャンスを不意にするわけにはいかない。