〈それなら、会ったときにお昼に誘うしかないね。同じ大学でしょ? それほど不自然じゃないはず〉

 僕の意気地なし的発言に呆れつつも、伊澄は代替案を出してくれた。



 しかし、自然か不自然か以前に、女性を食事に誘うことは、僕にとってハードルが高い。たぶん身長くらいあると思う。というか、直接会って誘う方が難しいのでは……。



「とにかく食事に誘うなんて、そんないきなりは無理だよ」

 弱音が漏れる。



〈全然無理じゃないから。そんで全然いきなりでもないから。会ったら話すような関係を一年以上も続けてきたんでしょ? それくらいの距離感の相手に対して、お昼まだなんですか? よかったら一緒にどうですか? って。はい、これの何がおかしいの? 二十五文字以上三十文字以内で答えなさい!〉



「いや……あの、すみません。何もおかしくないです」

 勢いに圧倒されて、僕は頷くしかなかった。

〈うむ。わかればよし〉

 伊澄の方もノリノリになってきているような気がする。



〈あ! でもさ、会うときって向こうも一人なの?〉

「うん。いつも一人。他人といるところは見たことないな」

〈それってものすごくチャンスじゃない! むしろ今まで何してたの!?  バカなの? アホなの?〉



 酷い言われようである。一応僕の方が年上なのに。だが、その通りなので言い返せず「すみません」と謝ることしかできなかった。

 石の向こうからは、大きなため息が聞こえる。