その翌日以降も、僕と伊澄の奇妙な関係は続いた。

 基本的に平日は、僕は小屋で、伊澄は公園で昼食を食べる。ただ、天気の悪い日は例外で、雨が降っているときは彼女は現れない。



 僕のいる場所では晴れていて暖かくても、彼女のいる場所では雨が降っているということが何度かあった。このことからも、僕と彼女の住む場所が離れていることがわかる。



 話しているうちにお互い敬語がとれて、かなり砕けた口調になっていた。僕は伊澄のことを呼び捨てで、伊澄は僕のことを〝キミ〟と呼ぶようになった。



 僕と彼女は物事の考え方に似通った部分があり、仲良くなるのにそれほど時間はかからなかった。波長が合うというのは、きっと僕たちのようなことを言うのだろう。



 住んでいる場所や個人が特定されるような会話は避ける。質問は、相手のプライベートに踏み込み過ぎない。

 そんな暗黙の了解を守ることで、僕たちは心地よい関係を築けていた。



 彼女は、昼休みに公園に足を運ぶ理由を、友人と喧嘩したせいで教室に居づらいからと言っていた。しかし僕は、その友人とどうなったのかは聞けないでいる。

 気になるが、毎日のように石の向こうに彼女が現れることから、状況は好転していないものと推測できる。そのことが、少し心配ではあった。