「懐かしいなぁ」

 文月さんから受け取って、パラパラとページを捲る。学部学科ごとの学ぶ内容について、詳しく書かれているようだ。教室や設備、サークル活動についても、カラーの写真付きで紹介されている。



 見覚えのある人物が視界に入って、僕は手を止めた。

「どうかしました?」

 文月さんが横から覗き込んでくる。



「いや、ちょっと知り合いが写ってた気がして」

 ページを逆に捲っていくと、僕の好きなあの人が見つかった。

「……やっぱり。朽名さんだ」



「どれですか?」という文月さんの質問に、僕は「この人」とだけ答えて、指で明李さんを示す。



 僕の指先では、明李さんがペンを握りながら真剣に前方を見据えていた。授業の様子を撮影したものらしい。ピンと背すじが伸びている。真面目な表情の明李さんも美しいと思った。



「わわわ! めちゃくちゃ綺麗な人じゃないですか!?」

「うん。そうだね……って、なんでそんな目で見るの?」

 文月さんは、眼鏡越しに僕を睨みつけるように見ていた。元々が小動物的な容姿をしているので、あまり迫力はない。



「なんか先輩、デレデレしてます。顔が緩んでます」

「ゆっ、緩んでないよ!」

 慌てて否定するが、おそらく無意識に緩んでいたのだろう。



「あはは、冗談ですよ」

 僕が必死に否定しているのがおかしかったのか、文月さんは破顔して言った。