「それ、付けてもらってもいいかな。あ、せっかくだから付けさせてほしいな」

「先輩が、ですか?」



「うん。嫌?」

「そんなことないです、けど」

 ただ、距離が……。



「じゃあ、失礼します」

 先輩は、私の手からネックレスを取り上げた。チェーンを外して、私の首に手を回す。抱きしめられているような体勢になった。

 なんだこれ。ヤバい……。心臓の鼓動が激しくなる。



 数秒後、先輩からのクリスマスプレゼントが首にかけられた。

「ついでに、もう一つお願いがあるんだけど」

 そのままの体勢で、耳元で囁ささやかれた。ダメだ、心臓がもたない。

「……何ですか?」



「俺の彼女になってください」



「え……」

 あまりにも幸せ過ぎる展開に、頭が真っ白になる。これは、夢?



「返事は?」

 いつの間にか、先輩の顔が目の前にあった。



「……はい。よろしくお――」

 それ以上は言えなかった。先輩が、私を強く抱き寄せていた。



 こうして正式に、私は先輩と交際することになった。





 先輩に最寄り駅まで送ってもらい、自宅のベッドの上でぼーっとしていた。

 私が好きな人が、私を好きでいてくれた。奇跡みたいだ。



 このことを報告しなくてはいけない。

 でも、誰に?

 ああ、お父さんからもらったキーホルダーのお守り。あの石を見ればきっと……。



 スクールバッグのサイドポケットを開けて、確認する。

 が、石は二つに割れていた。



 この石が何なのか。私が忘れてしまった人が誰なのか。石とどんな関係があるのか。何もわからない。



 けれども、大切な人だったことだけは覚えている。



「ありがとう」



 私は小さく呟いた。