「彼女がクリスマスは女子会とか言い出したんよ。で、代わりに一緒に過ごす相手が欲しかっただけだって。どうせなら顔がいい女の方がいいなって思って」

「はぁー⁉ 相変わらず最低だなお前は」

 非難しつつ、大声で笑っている。本気で最低だとは思っていない。



「でもどうすんだよ。今のとこ断られてんでしょ?」

「もうめんどくさいから引くわ。ちょっと顔がいいからって調子のってんだろ。彼氏いないってのも、男にちやほやされるのが楽しくて嘘言ってるだけだな。妻子持ちの若手社長とかたぶらかしてそうじゃねえ?」



 下品な笑い声が広がる。プライドの高さゆえの冗談だったとしても、僕は許せなかった。



「ま、最悪、サークルの一年でも適当に――」

 テーブルに両手をついて、椅子から立ち上がった。ガタッと大きな音がした。明李さんが目を見開いて僕を見上げた。



 男たちも会話を止めて、何事かとこちらを振り向いた。僕はそのまま、テーブルを迂回して男の方へ近づく。爽やかな仮面をかぶった最低野郎の前に立った。



「い、今の発言、取り消してくれませんか?」

 少しだけ、声が震えていたかもしれない。けれど、もう止めることはできなかった。



「何だ、こいつ」

「朽名さんは、そんな人じゃありません!」

 朽名さん、という僕の言葉で、彼も明李さんの存在に気づいたらしい。一瞬、彼女の方に視線をむけると、すぐに気まずそうに顔を反らした。