明日は、いよいよ宗平が告白する日だ。

 私は、彼の相談に乗ってしまったことを後悔していた。

 今さらもう遅いことはわかりきっている。ずっと、彼を応援するような態度で接してきたのだ。

 

 でも、まだ間に合うのならば、私は――。



 彼を応援したい気持ちはもちろんある。

 けれども、彼の恋が上手くいかない未来だってあるはずだ。

 私の行動次第で、それを変えることができるかもしれないわけで。



 相反する二つの気持ちが、心で渦を巻いて溶け合ってゆく。

 もう十分、真面目に生きてきた。ほんの少しくらい、ズルをしてみてもいいのではないだろうか。



 そんなことを考えてしまう自分が、どうしようもなく醜く思えてくる。

 消えてなくなってしまいたい。

 久しぶりに、そう感じた。





 次の日、生まれて初めて、私は学校をサボった。

 今までずっと、真面目に誠実に生きてきたはずなのに、突然すべてがどうでもよくなってしまったのだ。



「伊澄、体調は大丈夫?」

「うん。たぶん明日には治る。今日も午後から学校行けるかもしれない」

 母には具合が悪いと言ってある。勘の鋭い母のことだ。もしかすると、娘が嘘をついていることに気づいているかもしれない。



「そう。無理しなくても一日くらい大丈夫よ。今日はゆっくり休みなさい」

 気づいた上で言っているのだとすれば、とても優しい母だ。そして、私はダメな娘だ。



「でも、テストも近いし……」

 本当は、テストのことなんて気にしていなかった。授業も成績も何もかも、今はどうでもよかった。

 嘘を重ねると同時に、罪悪感が積もっていく。



「本当に伊澄は真面目ね。誰に似たんだか……。それじゃあちょっと買い物行って来るから。何かあったらすぐ電話してね」