自分で言うのもどうかと思うが、私は真面目な人間で、不器用で、融通が利かない。

 中学生の頃は特に、空気を読まない発言をしてしまうことが多くあった。



「朝、少し早く登校して、学校の周りのゴミ拾いをするというのはどうでしょう」

 学校内のことではなかったが、美化活動であることには変わりない。



 通学路に、タバコの吸い殻やお菓子の袋などが落ちているのを見ると、やるせない気持ちになる。

 やりがいもあるし、何より、地域の人にも喜んでもらえるのではないか。そう思って提案した。



 ところが他の人にとって、委員会の活動に求めるのは、楽であるということだけで。

 めんどくせー。どうしてそんなこと……。先ほど早く決めたがっていた人たちから、そんな声が聞こえる。



 またやってしまった。

 周りに合わせることも大切なのはわかっている。けれど私は、そういったことが苦手だったのだ。

 立ったまま下を向く。責めるような視線もちらほら感じた。



「いいんじゃない?」

 ぎくしゃくした雰囲気が流れている中、よく通る声で言ったのは副委員長だった。

 その場の全員が彼に注目した。私はその隙に腰を下ろす。



「朝早く起きるのも大変かもだけど、内申に書けるじゃん。高校って、そういうボランティアやってる人大好きだし。有利になるんじゃないかな。ねぇ、先生」



「ん、まあ、ボランティア経験のある受験生とない受験生だったら、高校はほぼ確実に前者を合格させるな」

 ボケっとしていた顧問の教師が、突然自分に話を振られたことに驚きながら、そう答えた。



 このときの私には、まだ内申の意味はよくわかっていなかったけれど、三年生と一部の二年生の雰囲気が少し変わったことには気づいた。



「それに、他人から感謝されるのって結構気分いいよ」

 笑顔を作ってそう続けると、先輩は教室全体を見回した。

 生徒たちはしーんとしたまま、反応はない。本来場の主導権を所持しているはずの委員長も、成り行きを見守っていてる。