小屋で温かいほうじ茶を飲みながら、僕は伊澄を待っていた。明李さんに告白しようとしている日は、二日後に迫っている。



 ちょうどお茶を飲み終えたタイミングで石が輝き、

〈お待たせ〉

 凜とした伊澄の声が響く。



「……ああ」

〈何、その気の抜けた声は!〉

 会話開始から三秒ほどで叱責を浴びる。



「あ、いや」

〈わかってる。不安なんでしょ。告白するのが〉

「まあ、それもあるけど……」

〈他にも何かあるの?〉



「こうして、伊澄と話せるのはあとどれくらいなんだろうって」

 石から聞こえる伊澄の声は、かなり音量が下がっているように感じる。僕の声もきっと向こう側に届きにくくなっているはずだから、なるべく石の近くで喋るようにしていた。発する光も弱々しくなっている。



〈うーん……どうなんだろうね。もう、一ヶ月前に話したことも細かく思い出せない〉

「僕もそんな感じ」



 遠くから見たその形はどうにか識別できるのに、ズームアップするとモザイクがかかっていて輪郭がはっきりしないような、そんな変な感覚。ファンタジーなどでよくあるような、記憶を消す魔法を受けたら、こんな感じになるのだろうか。