「明李さんが、イケメンにとられちゃうかもしれない」

〈は? 全然わからない。もっと詳しく説明して〉

「うん。先週のことなんだけど――」



 僕は事の顛末を話した。

 明李さんがイケメンと並んで楽しそうに歩いていたこと。そのイケメンがクリスマスに明李さんを誘っていること。明李さんが過去の恋愛でトラウマを抱えていること。



 意図せずして告白になってしまった僕の告白が、完全にスルーされたこと。明李さんが恋愛に対して前向きになってみるというような発言をしたこと。



〈なるほどね。まあ、心配しなくても大丈夫でしょ〉

 伊澄は、僕とは対照的に気楽な様子だ。

「えぇ? 人がこんなに悩んでるのに……。根拠は?」

〈ないけど〉



「じゃあ、何でそんなことが言えるの?」

 思わず、ふてくされた態度をとってしまう。

〈今日は一段と面倒くさいなぁ。ちょっとはポジティブになんなよ〉

 面倒くさいと言われ、僕は言葉を詰まらせる。



「でもさ、恋愛に前向きになるってことは、その男の誘いに応じるってことじゃないの?」

〈まあ、普通に考えればそうなるね〉

「ほら! 僕の恋は終わった」



〈ならキミもクリスマスに誘ってみればいいじゃない〉

 ずいぶんと軽々しく言うけど、そんなことができるとも思えないし、仮に……。