「何が食べたい?」

ベッドから出た私は、髪を一つに束ねながら、まだベッドの中にいる齋藤君に振り返った。

「え?何がって…言ってもいいの?」

目を輝かせた齋藤君からは、期待の2文字が見えた。

「あ、うん。私が作れる物であれば、だけど」

作れる自信が、そんなにないのに期待されちゃあと、段々自信がなくなってきた私の声が小さくなった。

「あ、でもあんまり時間がかかるのは、無理だよ?」

言い訳をしてみた。
ややこしいのは無理だよと。

齋藤君は考えたのか、顔を上げると声に出して食べたいものをリクエストした。

「グラタンかな」

「えぇ。グ、グラタン!」

「もしかしてダメなやつ?」

「あー、ううん。大丈夫、でもちょっと家にないものもあるから、食材買ってくるわ」

そう言うと私はベッドに齋藤君を残して、近くのスーパーに買い物に出ようとした。

「何やってんの?俺も一緒に行くから」

「えぇっ!い、一緒に?ダメだって」

「なんで?行くから」

そう言うと、齋藤君はベッドから出て出かける準備をした。

はぁ。
なんでこうなるかな…

齋藤君とスーパーで買い物なんて。
夢にまで見た、光景だけれど…

いきなり過ぎるでしょ!

「早く、行くよ」

出された手を戸惑いながら、私は握った。