「いや…あ、あの」

私が大声で叫んでしまった事もあり、齋藤君はしまったと言う顔になって、慌てていた。
叫んだ私も、悪かったなと思いながらも、慣れないこの状況に現実を受け止める余裕がまだ出来ていなかった。

「や、やっぱり、俺の部屋はなしでいいです。マズイですよね、すみません…」

「あ、ううん。ごめん、私こそ…」

齋藤君の困った顔を見て、我に返った私。

「静かに話が出来たらいいんだよね?」

「え?あ、はい」

じゃあ、と私は齋藤君を連れて和音に行った。


「いらっしゃ…い??」

和音に行くと、和己さんが私が連れている齋藤君を見て驚いていた。
そう、目が物語ってた。

告ったのか?うまくいったのか?

と。

そんな訳ないでしょ、と目で合図したものの…きっと私は挙動不審だったはず。

「え?佐々木さんですか?」

「おう!齋藤元気か?店の事は話してなかったからな、ここ俺の店なんだ」

さすが、元営業部のエース。
何もなかったように、齋藤君に話しかけていた。

「和己さん、会社の人にお店の事あんまり教えてないもんね。私の行きつけなんだ」

「あ、…そうなんですね」

齋藤君?
お店の照明のせいか、心なしか齋藤君の表情が暗く見えた。

カウンターに座り、私はカクテル、齋藤君はビールを飲みながら、話をしていた。
もちろん、そこに和己さんが会話に入る事もなく。