頭を押さえながら、昨日の事を思い出していた。

茉耶さんから、白石さんが帰ってくる話を聞いて…、私の事を聞いてたとか。

まさかね。

そんな事ないよね。

うん、ない、ないない。

「あるわけないじゃん。そんな、自意識過剰もいい加減にしとかないとね。うん。ダメだな、モテないからって妄想を抱いちゃ」

洗面所で顔を洗い、鏡に映った自分に言い聞かせた。

「よし」

仕事に行く服に着替えようと、クローゼットを開けた。

「今日は…これにしようかな」

勤めている会社は制服があるから、基本何を着て行っても注意はされない。
ま、社会人としての常識範囲だけれど。

着替えが終わり、さぁメイクにかかろう、と思った時、机の上に置いてある携帯が鳴った。

「ん?こんな朝早くから誰だろ?」

携帯を手にする前に、時計を見たら7時を少し回った所だった。

「っ…え?な、なんで…」

齋藤君からだった。

「も、もしもし…」

多分、普通に出ていたはず。

「おはようございます。すみません、こんな早くに…」

「お、おはよう。ううん、そ、そんな事ないよ。何かあったの?」

「いや…、昨日…の事で。夜、電話したんですけど、出なかったから気になってしまって」