「…っ、さ、齋藤君?」

「えっ…そ、そうですけど。出先からかけてたみたいで、戻ってきた時に電話を忘れて帰った事は伝えたんですよ。永山さんが、具合悪くなったから早退したことも…」

「…そ、そう…」

倉橋さんの話が、半分は耳に入ってなかったかもしれない。
どんな顔して会えばいいのか…、携帯の事はすっかり忘れていた。
昨日、連絡するべきだったのに。

「無理させたから、って心配してましたよ。齋藤さん」

「…そっか…、無理したとかじやないから齋藤君には話するよ」

そうは言ってみたものの、なんて言っていいのか、何も思いついていなかった。

電源を入れた携帯には、齋藤君からの着信とメッセージが数件着ていた。
携帯を握りしめ、私は倉橋さんより先に更衣室を出た。

少し歩いていると、いきなり誰かに腕を引っ張られた。

「…っ、え?」

誰?と思った瞬間、掴まれた腕ごと、そのまま抱きしめられていた。