昨日、茉耶さんや和己さんから言われた言葉を思い返していた。

「…好きな人なんだったら、素直になれるでしょ?」

好きな人なんだったら…
聞けない、なんて言ってられない。
確かめたい、齋藤君の気持ちを。
そして、ちゃんと私も好きだと伝えたい。

「おはよう、永山大丈夫なのか?」

「あ、白石課長。おはようございます。昨日はすみませんでした…ゴホッ」

「無理してるんじゃないのか?」

「いえっ、咳は昨日に比べると良くなってます。大丈夫なんで」

心配そうに私を見る白石課長に緊張しながらも、私はその場を離れて更衣室に向かった。

「おはようございます。永山さん、大丈夫なんですか?」

「あ、倉橋さん…ゴホッ。ごめんね、昨日は昨日より元気だから」

私を見つけた倉橋さんが、心配そうに声をかけてきた。

大丈夫だからと話をすると、少し安心したようだった。
いろんなひとに心配をかけたなと、思いながら制服に着替えた。

「そういえば昨日、永山さん、携帯忘れて帰りましたよね?」

「…っ、え?あ、そう…だっけ」

携帯?電話を忘れて帰ったと言われ、今朝そういえば携帯見なかったな、と思い出した。
昨日、カズさんに電話した後、自分の机の引き出しに入れて、そのまま置いて帰った事を思い出した。

「帰った後に電話が鳴ったんで、気が付いたんですけど。ロッカーに入れときましたよ。あ、あんまり電話鳴ったんで、電源落としましたけど」

「あ、そうなの?ありがとう。ごめんね」

「いえいえ、あ、誰からかかってきたなんて見てないですよ。って言いたいんですけど、見ちゃったんです。…で、かけてきた本人には、忘れて帰った事伝えましたよ?」

「へぇ、そうなの?誰だろう…」

そう言いながら、携帯の電源を入れた。

「齋藤さんですよ。早退した、って聞いて慌ててましたよ」

齋藤君…?