それから、茉耶さんが運転する車で、病院に向かった。
軽い風邪だった。

ただ咳がひどいと言う事で、気管拡張剤が出された。
これで、少しは治まる。

病院を出た私を、茉耶さんは家まで送ってくれた。

「さ、食べたら、とにかく横になんなさい」

家に着くと、茉耶さんは食べて寝るに限ると、お粥を作ってくれた。

「美味しい…」

作ってもらったお粥が、私のお腹も心も満たしてくれていた。

「何があった?かなんて聞かないけど。だけどね、昨日齋藤君、和音に来てね、悩んでたよ。年下だから頼ってもらえないのか、って、絢もさ、強がってないで、素直に飛び込んでみたら?男の人に免疫ないの知ってるけど、好きな人なんだったら、素直になれるでしょ?」

黙って話を聞いていた。
好きな人なんだったら…

「別れたいの?長く片思いしてた相手でしょ」

「…っ、別れたいなんて!好きなのにっ!」

茉耶さんの別れたいの?に強く反応してしまった。

「あ…」

「ほら、それが本音なんでしょ?そのままぶつかんなきゃ、これからもっと大変な事にぶち当たったとかどうすんの?」

黙って、頷く私に茉耶さんは、今日はとにかく早く寝なさい。話はそれからね、と言って帰って行った。


齋藤君に会いたい。
会って話がしたい、と思った。