ーガシャン!
「うるせぇ!早く家から出でけ!」
...またか。
「もう、出ていくから。でもっ、ゆずとはるだけは...。」

「ねぇ、いい加減にしてよっ!?お父さんは、何が気に食わないの!?ねぇ!」
「ゆずまで...やめて」
...殴られるっ!

「ったっ...。」
「うるっぜぇんだよ、お前に、俺の気持ちが分かるかよ!?」
蹴られて、殴られて...。
...痛い、痛いよ…。

うちの家庭は、父、大手企業の副社長。母、看護師。その間に産まれた、あたし、楠木 柚葉と弟の遥翔。
あたしの家族は、周りからだと、すごく裕福に見られてたみたいで。
もちろん、幼かったあたしは分かるはずもなく。けど、とても幸せな毎日を過ごしていた。

...いつからだろう?
家族が壊れたのは。

~遡ること、1年前~
当時中三のあたしは、受験を来月に控えて、毎日塾に通っていた。
そんなある日、少しテストで遅れて帰ると、お母さんが頭を抱えて座っていた。
「ただいま、あれ、お母さんどうしたの?」
「あぁ、おかえり、柚葉。」
...一瞬で悟った。なにか良くないことがあったんだ...と。
そうして、あたしに向かって、お母さんは、重たい一言一言を言った。
「お母さんね、妊娠したの」
「それって、下が出来るってこと!?ほんとに!?」
「でも、でもねっ。お父さんとの子供じゃないの」
...は?

これが全ての始まりだった。