〜あの時のあの言葉は〜

私は、先生の不振な行動に不安しかなかった。

ふと一年の時の事を思い出した。
一年の時の担任は多胡先生という人だった。何かあったという事はないけれど、一つだけ言われた言葉で忘れられないものがあった。

「城咲、無理してないか？」

唐突に何の前触れもなく放たれた言葉。それを聞いて私は目を見開いた。

「何のことですか？」

私はあの時そう返した。そして先生の眉がピクリと動いたのが分かった。

「いや大丈夫ならいいんだ。気にしないでくれ。」

今思うと、あの時私が先生に向けた笑顔は多分とても空元気な冷たいものだったと思う。

多胡先生がああいった事を聞いてきたのは、あれが最初で最後だった。

『無理してないか？』頭の中でその言葉が何度も再生される。その度に少し心が痛い。
佐藤先生が私を呼び止めた時の雰囲気が、あの時の多胡先生の雰囲気に似ていたから。どうしようもなく不安に思う。

お願いだから、何にも気づかないで。