〜再び涙する〜

「次、誰?」

「ちょっとマイクどこ?」

「おぉっ、来ましたこの曲。」

賑わうカラオケルーム。

何故だか西条くんの事が頭から離れない。私はそれに耐えれず外に出た。

「何してんの、こんな所で。」

ボーっと壁を見つめる私の所に彼は来た。

「何もだよ。西条くんこそ。」

私がそう言い見上げると、少し困った顔をする彼がいた。

「ごめんね。俺、この前急に変なこと言ったなと思って。」

何でそんなに優しいんだろう。

違うの、謝らないで。
むしろとても嬉しかったんだから。

「違うの。そうじゃないの。

人前で泣くなんてもう何年もしてなかったから。

こっちこそ、ごめんね。

だから、どうしたらいいのか分からなくて。」

幻滅したよね。

私が向けた笑顔は下手くそで、西条くんは見透かすように私を見つめた。

「ずっと、一人で。誰もいない時にああやって、泣いてたの?」


『人前で泣くなんて何年もしてなかったから。』
西条くんはそのサラッと言った言葉をすくい上げてそう言った。

包み込むようなその声と言葉に私は目を見開いた。

「ずっとずっと、何年もああやって。一人で全部抱えて。」

何、言ってるの?

蓋をしていた心にそっと入ってきたその声は、有無を言わさず麻痺していた心に優しく注がれた。

目元が急に熱くなる。

「西条くん、何言って。」

声が少し震えた。

「ごめんね、私もう帰る。

ありがとね。

この前のこととか、忘れて。西条くんには、関係ないから。」

私は、こんなに泣き虫じゃないはずなのに、どうしたんだろう。

西条くんの顔も見ず、私は俯いたままそう言った。

西条くんに背中を向けてそこから逃げるように私は帰った。

また、逃げるように。