…遅くなってしまった。
俺は塾からの帰り道をひとり、早足で歩いていた。
週に3日塾に通っているのだが、授業が終わった後も自習室でつい時間を忘れて勉強してしまった。
受験生だから、というより勉強は昔から好きだ。知らないことを知れることは単純に楽しいと思う。
ふと何気なく目をやったマックの店内に見知った顔があったような気がして、足を止めた。
…まさか。
少しバックして、もう一度よく見てみる。
間違いない。奴がいる。
最近の頭痛の原因、衛藤亜衣。
窓際の席で黙々と勉強しているようだった。
チラ、と時計に目をやると午後11時を回っている。
…何が彼女をこんなに突然、勉強に目覚めさせたんだろう。やはり受験か?
ま、俺には関係のないことだが。
再び歩き出そうとしたときだった。
「おいあの子めちゃ可愛くね?」
そんな声と共にチャラチャラとした男数人がマックに入っていくのが見えた。
…なんだか嫌な予感がする。



