頭どうかしてるんじゃないの?って思う。

思うのに───。


「……ん、お手」


『最後のチャンス』と言わんばかりに再び差し出された杉浦くんの手をしばし見つめた私は、


「……~~っ」


───"ポン"

結局、下唇を噛み締めながらも、現文の教科書見たさに杉浦くんの手に自分の手を重ねてしまった。

挙句……


「はい、よく出来ました」


そんな言葉を吐き捨てて、ぐしゃぐしゃと私の頭を撫でる杉浦くんの手に、この後に及んでドキドキと加速する私の心臓は欠陥品なのかもしれない。


「もう!髪の毛グシャグシャじゃん」

「それは元からだろ。早く机寄せれば?」


あー、もう嫌になる。

これから50分間、この悪魔のような杉浦くんと机をくっつけて過ごすなんて、耐えられる気がしない。



***

あれからすぐに先生はやって来て、思いのほか授業がアッサリ幕を開けた。


結局、杉浦くんと机をくっつけて仲良く教科書をシェアすることになったのはいいけれど、肝心な先生の声は、せっかく教科書を手に入れたというのに全然頭に入ってこない。


……と言うのも『やけに杉浦くんと距離が近いなぁ』とか『杉浦くんいい匂いがするなぁ』とか『ノートをだるそうに取る指先がすごく綺麗だなぁ』なんて、


私の意識は完全に杉浦くんに集中してしまっている。