夕闇の時計店

「氷宙さん、えっと……父が……」

事の発端である衣月ちゃんの父親が謝罪した事実を聞いた。

「だから、緋瀬さんに伝えないといけないのに……考えすぎって、緋瀬さんの……ばか」

「そうだねえ……莫迦だ。幸せを願っても思い違っちゃあ、悲しめるだけ……」

衣月ちゃんは二人で居てこそ幸せだって思ってくれてるから、大丈夫だよ夜一。

ボクたち妖と人との本気の恋、ねえ……傷つくだけじゃあ、ない……のかな。

……ボクは二度とごめんだけど。

「氷宙さん??」

「ん~?あ、そうだ!衣月ちゃん、どんなデザインが好き?今度、服作りの参考にさせて?」

顔に、出てたかな。

ボクは笑顔で、今は、友の幸せだけを願わなきゃあいけねいよねえ……。

「…………」

服のこと、夜一のこと、他にもいろんな話をして、刻々と時間が過ぎていった。

ボーン……ボーン…………

店の大時計が時刻の変わりを伝える。

「行こうか」

「はい!」