夕闇の時計店

「っと……暗いなあ」

薄暗くて狭い廊下……屋敷とは大違いだねえ。

ガチャガチャッ

「うわあっ!?」

後ろでドアノブを回す音が響き、驚いた。

そのまま、勢い良くドアが開く。

「開いた!……え!?」

「あ。こ、こんにちは~。衣月ちゃん」

まさか、こっちに来てすぐに出会うって……気まずいなあ。

やっと開いたドアの向こうに居たのは、夜一じゃあなくてボクだもんねえ?

予想通り、嬉々としてドアを開けた彼女の顔が、すんっと表情を失った。

「はぁ……」

「……溜息は傷つくなあ」

「あ……ごめんなさい。氷宙さん」

無理に笑顔を作ってるなあ……女の子にこんな悲しい顔させて、帰ったら覚えてなよ?ヘタレ鬼。

「もういっそボクと付き合わない?」

「あはは。嫌です」

「衣月ちゃんって結構ハッキリ言うんだねえ……大丈夫、傷ついてない。夜一から話は聞いてるけど……中で話そっか」