こんな状態……衣月ちゃんにしか治せないよねえ。

「帰る」

友に背を向けて、帰路にはつかず、こっそりと敷地内の庭へ向かう。

「ここだっけ？」

古びた木製のドアを前に呟いた。

「ボクもお人好しになったなあ……いや、かけがえのない友へのお節介、かな？」

呉服屋の在庫とか置かせてもらってるし、初めての恋路が台無しで終わってほしくない。

「……というか、夜一が本調子じゃないとボクの仕事が増えるんだよねえ」

しっかりしてくれよ、頭領さん。

ドアノブに手を伸ばし、回すも開かない。

「ちっ……鍵かけてるのか……」

もー、これじゃあ衣月ちゃんが来ようとしてても分からないじゃんねえ？

ここは……

「どこを開けても人の世界に行ける鍵～」

まあボクも夜一ほどじゃないけど上層の妖だからねえ、こんな便利なものも持ち歩けるということで……

ガチャ

久しぶりに人の世界へ～。