「……!?」

両手をぎゅっと握られ、ニコニコとした笑顔で見つめられる。

「その着物、ボクが作ったんだ。良かったらこのあと店でお茶でも……」

バシっと強い音がして、氷宙さんの頭が傾いた。

「おい。手を離せ、この淫狐が」

不機嫌顔の緋瀬さんが背後から頭を叩いたらしい。

「痛いなあ……ボクは淫狐じゃなくて神使!神聖な御狐様だぞ?」

「神の使いが軟派とは天界も末だな」

「だって目の前に可愛い女の子がいたら話しかけるだろう?夜一は硬過ぎるよねえ……ね、衣月ちゃん」

「えっ……いやぁ……」

急に話を振られても困るっ。

確かに緋瀬さんは硬……そんなこともないくらい甘いときも……あるな。

それより、未だに握られたままの両手と、怒り心頭の緋瀬さんが恐いんだけど!

「ところでキミ、夜一とはどういう関係?女に一切興味がないと思ってたから驚いてさあ。もしかして餌?奴隷?っていうか種族は鬼?それとも狐?人に化けるの上手いねえ」

マシンガントークすぎる上に、ぺたぺたと頬を触られる。

「氷宙さん、あ、あのっ……わっ」

ぐいっと後ろ襟を引かれ、氷宙さんと離れる。