ザッ……と道を草履が擦る音が聞こえた。

「ちょっとちょっと、キミたちこの辺の者じゃあないね?ボクの店の近くで女の子を虐めるのは見過ごせないなぁ」

紺色の派手な着物と、右耳にピアスが輝き、薄茶色の髪はハネている若い男性。

人の良さそうな笑みを浮かべながらゆっくり歩いてくる。

「チッ……見られたら、なかったことにするまでだ!」

「そう来るなら応戦するしかないよねぇ?……疲れるのは嫌い、なんだけど!」

殴りかかる鬼に、人の姿のままで男性は避け、素早く後ろに回ると相手の首に手を振り降ろした。

「ぐ……っ」

息を詰まらせて鬼が倒れる。

「ふぅ……で、そっちは女の子を人質にするわけ?」

私を押さえていた男はナイフを私の首元に当てた。

「っ……」

「ま、いいけどさ」

「んん!?」

良くない!

ニヤリと若い男性は笑い、上空を見た。

つられて、私と男も見上げる。

「2対1じゃあ寂しいから、ね?」