一人で賑やかな雑踏に取り残されて、不安になる。

何か重要なこと話してるのかな……早く戻ってきてほしいな……。

「わっ……」

一層と混雑した流れが押し寄せて、密集した団体に足元がおぼつかず緋瀬さんの見える範囲から離れた。

戻らないと……そう思うのに、満員電車のように身動きがとれない。

「緋瀬さん……っ」

そのとに、突如として布のような物で視界が奪われ暗くなる。

「えっ、何……っ」

口も塞がれ、強い力で引き摺られるようにして雑踏から抜ける。

「!?んーっ……」

出店の明かりを感じなくなり、どこか暗い場所に移されたらしい。

ぱっと、目隠しが外される。

目の前には一人、ガラの悪い男が立っていた。

……口を塞いでる人も、ってことは二人。

何?誘拐??

思いのほか冷静に頭が働く。

「俺らは仕事を頼まれただけだ。神の力を持つ女を連れてこい、ってな」