追いかける声は耳に届かず、がむしゃらに庭から続く木々の間へと入っていった。

「はぁ……っ、あ……!」

木の根に躓いて転ぶ。

……どれくらい走ったんだろう。

人の体は、身の危険を感じるとこんなに頑張れるのか。

「はぁっ……」

でも、もう限界。

肺が焼けるように痛いし、息ほとんどできないし。

転んだまま起き上がれずに、視界が歪む。

温かい涙が顔を伝って落ちていった。

「…………」

なんでこんなことになっちゃったんだろう。

神様、私はこんな訳のわからない地で死にたくないです。

隙間風のような呼吸を聞きながら、ぼーっとする頭で、まだ意外と言葉は浮かぶんだなぁと思った。

まだやりたいこと、たくさんあったのにな……。

ドン、と地震のように地面が揺れ、雷のような轟が響いた。

「……!?」