今の、何……?それより、薬……

「ない……」

ガクン、と足が力を失って体は庭へ倒れた。

「い……っ」

薬を飲めないこと、消えない圧迫感と細い呼吸に焦りそうになって、唇を噛み締めて、砂利を握りしめた。

死にたくない……っ。

縁側に手を付いてフラフラと立ち上がる。

「だ……れか……っ」

「おい」

後ろからの低い声に振り返ると、まず、赤黒い手と鋭い爪が目に入った。

その手が自分に向かって伸びてくるのを見て、後退る。

視界に入った足も、手と同じように赤くて、爪が鋭い。

「!?」

人じゃない……!

「……っ」

本能が逃げることを選んだ。力を振り絞って、走る。

「待て!……✕✕っ!」