「……手どけて」

低く、かすれた落ち着いた声音。


「だ、ダメだよ……」


わたしが睨むように夏向を見れば、従わず抗うわたしが気に入らないのか、力で押さえつけようとしてくる。


両手が夏向の片手で簡単に拘束された。



「冬花は俺のいうこと聞けないの?」

「か、勝手なこと言わないで……っ」


夏向はどこまでも自分勝手だ。
いつだって、わたしが言いなりになると思ったら大間違いだ。



「……冬花のくせに生意気。俺がいないとダメになるくせに」


「だ、ダメになんかならない……。わたしは夏向がいなくても平気……」


「うるさい、黙って」


怒りを抑えた声で、空いているほうの手でわたしの口元を覆ってきた。


「……ん、く、苦しい……っ」


夏向の大きな手が口元を覆うせいで、息が苦しい。

しかも力の加減がバカになっているのか、本気で息をさせないくらいに押さえつけられる。