荒々しく壁に身体をドンっと押し付けられ、誰か確認するひまもない。


だけど、誰か顔を見なくても、ふわっと香る柑橘系の匂いで誰かわかってしまった。



「か、かなた……」

「…………」


わたしの身体を簡単に押さえつけてくるのは、まぎれもなく夏向だった。



今日学校に来ていたんだ。
久しぶりに見た夏向の制服姿に妙にドキッとしてしまった。


カーディガンを羽織っていて、中に着ているブラウスは第2ボタンまで開いていて。

ネクタイも緩く締めていて、
着崩し方がすごく色っぽく見えてしまう。



あぁ、もう……。
夏向の姿を見ただけで、触れられただけで、こんなにも釘付けになってしまう。


そっと顔を上げてみれば、夏向の不満そうにこちらを見る表情をとらえた。


そして、そのまま何も言わず顔を近づけてきたので、とっさに口元を手で覆った。