「言わせようとしないで……っ。
わかってるくせに」


わたしが強気になって言い返すと、
夏向はフッと軽く笑いながら。



「わかってても言わせたいから。
冬花の口から俺を求めてよ」



唇に夏向の人差し指がトンッと触れた。



いつもいつも、
わたしは夏向に簡単に落とされる。


求めたところで、わたしと同じ気持ちを返してはくれないくせに……。



今までのわたしは夏向のそばにいられなくなると思って、好きなんて伝えなかった。


そもそも、この考え方が間違い。



お互いがお互いを求めるくせに、
特別な関係としては成り立たない。


なんなの、矛盾ばかり……。



だったら、その矛盾を自分で壊すしかない。