このままだと危険な予感がするので、
つかまれた手を少しだけ動かして抵抗する。


離してほしいと目で訴えても、
そんなの全て無視される。




「……そんなに木咲くんがいい?」


手首をつかむ手の力は強いくせに、
空いているほうの手でわたしの頬にそっと触れる手は、とびきり優しい。



「俺は冬花ちゃんを奪えるもんなら
このまま奪っちゃいたいけど」


「……本気、ですか……っ」



「これが嘘に見える?
はじめてだよ。自分がここまで誰かに執着してるのは」



わたしの容易な考えで始まってしまった
佑都先輩との関係が、まさかこんな展開を迎えるなんて予想もしていなかった。



どうせ、こんな関係すぐに終わるだろうって……。


佑都先輩はわたしのことをからかってばかりで、
お互い好きなんて気持ちなかったし、芽生えるはずもなかったのに……。