とっさに後ろに手をつくと、壁がヒヤリとして冷たい。



おそるおそる顔を上げてみれば、
佑都先輩の顔はいつになく真剣だった。



いつものようにふざけている様子はない。


表情をいっさい崩さないから、何を考えていて、これから先なにを言ってくるのか予想ができないからこわい。



だけど、夏向のことを聞いてあからさまに取り乱していたわたしの様子を見ていたから、



きっと……



佑都先輩は、わたしを夏向の元へはいかせてくれない……


直感でそう思った。





「……今すぐ木咲くんのところにいきたい?」



声色はいつもとそこまで変わらない。


けど、ここでわたしが夏向のところへいきたいといって、それを聞いてくれるとは到底思えない。



まるで今のわたしの考えを全て読んだかのように、両手を拘束された。



「……残念だけど俺はそこまで優しくないよ」