誰かわたしの目の前に立っている。

おそるおそる、顔を上げて見たら……。



「う、うそ……な、なんで……っ」



そこにいるはずのない人物がいて、驚きを隠しきれない。


涙のせいで視界は霞んでいるはずなのに、
誰なのかはっきりわかってしまう。



「なんで、どうして……っ

夏向がいるの……」



わたしの目の前に立ち、大きな影を作っているのは、1年前と同じように夏向だった。



まさかここに夏向が来るとは思っていなくて、驚きで固まってしまう。



そんなわたしとは対照的に、夏向は相変わらず表情を崩さないで、何も言わないまま、わたしの隣の空いているブランコにのった。



夏向が足で地面を蹴り、ブランコが揺れる。


こちらを見ようとはせず、夜空を見上げながら。



「……今日はなんで泣いてんの?」