初めて人生最大の危機を迎えているかもしれない。
たかが風邪で大げさかもしれないけれど、それくらい身体がやばい。
とても外に出られる状態じゃない。
とりあえずコップを手に取り、水道の蛇口をキュッとひねり、水分を身体に取り込む。
生ぬるい水道水は喉を通っても、
全然気持ちよくない。
「はぁ……っ」
いったん自分の部屋のベッドに戻り、力なく倒れた。
残り少ない力を振り絞ってスマホを手に取り、樹里に連絡をしようとした。
だけど、たしか今日樹里はお父さんの実家に帰ると言っていた。
樹里が頼れないとなると……。
佑都先輩の顔が浮かんだけれど、受験生を呼びつけるのは悪いし、風邪移ったら大変だし……。
あとは……。
スマホをスクロールさせる指がピタッと止まる。
表示されている名前は
━━木咲夏向……

