「それだけでは人は生きてはいけないのよ。
 嫌なことやつらいことを忘れて、楽しいことだけかき集めて包まって、目をつむってちゃいけないの」

彼女の言葉はありふれていて、とてもチンプだった。

そう思った。

「あなたが死ぬほど好きよ。
 だから壊れてほしくないの」

「でもきみのほかになにもいらないのはたしかだ。
 なんにもいらないんだ」

「どうやって生活していくの?」

その言葉は妙に生臭く、ひさしぶりに吐き気を感じた。

「ほら、また逃げてる」